採用活動のゴールは「採用」。
もちろん人それぞれゴールは定めているだろうが、採用活動におけるゴールの1つには必ず「採用」があるだろう。
だが、本来のゴールは「採用後に自社に貢献・活躍する人材の採用」であるはずだ。

人材を採用するための活動は大きく分けて3つのプロセスに分かれている。

①接点
②判断
③意思決定

出会わなければ始まらない、自社にマッチするか慎重に判断する、最後には双方良縁となることを願い内定を出すという流れだ。

①接点(出会い)

出会わなければ始まらない。
でも誰でも良いわけではない。
人であれば良いということを口に出してしまうような人事(採用に関わる方)なら真っ先に採用業務から手を引いた方がよいだろう。
接点の量・質を高める前に行うべきことがある。

・ターゲットは誰か(パーソナルな面含め、具体的にどこで何をしている人かなど)
・”なぜ”そのターゲットを”今”採用を検討しているのか
・そのターゲットに振り向いてもらえるだけ自社に魅力はあるのか
・魅力を魅力と感じてもらえるリアルは説明(証明)できるのか etc

大前提、自社のことを理解しなければ採用はただの業務になりかねない。
本来、採用の目的には自社に貢献・活躍する人材の採用であるはずだ。
(※もっと具体的にどう活躍する人材か、なども考えるべきではある)

簡単にいえば、野球であなたがピッチャーであったとする。
ターゲットというのがキャッチャーだ。
どんな方を求めているか語れないまま採用業務を行うのは、まさにキャッチャー不在でどこにボールを投げたらよいかわからず無駄投げしているに過ぎない。
具体的にターゲットを定め、そこに目がけてボールを投げることが必要なのだ。

昨今、採用手法が多様化しているため、ボールをキャッチャーの元まで届けられるかは採用戦略に関わってくるだろう。
ただ1つ、キャッチャーが見えているのであれば、ボールを届ける工夫と戦略の分析もできる。1歩ずつでも着実に近づいていけるはずだ。

②判断(慧眼:けいがん)

勘違いして欲しくないが、自分が人のことを見極められるとは考えない方が良い。
ただ、採用活動において多くの人材と触れることによって潜在能力などを見抜いたり、将来活躍する人材が予想できたりするなど慧眼(けいがん)が身につくこともある。

では、判断はどのようにするか。
前述の①のターゲット(人材要件)が定まっているという前提で話を進めよう。
私がお勧めするのがSTAR面接(行動面接)だ。

STARとは4つの単語の頭文字をとったもの。
S(Situation):過去の状況について
T(Task):その時の課題は何か
A(Action):どういう行動を取ったか
R(Result):その結果は

これは、応募者の価値観や性格、思考パターンを知ることができる。
具体的には例を出してみよう。

例では「トラブルが起きた際、チームの統制を取れるリーダーかどうかを見極める」ことが質問の意図である。

◆1.Situation:質問/回答例
企業:「キッチンが回らなかったのね。その時のあなたの役割を教えてください」
応募者:「私はホールのリーダーを務めていました」
企業:「あなたにはどのような裁量がありましたか?」
応募者:「ホールのメンバー5名のマネジメントを中心に、ホールに関する消耗品の発注やメンバーの昇給判断まで行っていました。」
企業:「メンバーは全員協力的でしたか?」
応募者:「役職における役割分担が明確でしたので、比較的協力的であったと思います。しかし、昇給判断まで行っていることに批判的な声もありました。その為、昇給結果の伝える際、評価シートを作成し可視化を行い、判断に至った説明を一人ずつ丁寧に行うことを気を付けてきました。」

というように、過去の経験をピックアップしS,T,A,Rについて確認をしていくのだ。
人材の考え、感情の動き、行動特性、更には再現性までも知ることができるだろう。
特に「再現性」は、まさに自社に入社した際に活躍する可能性(将来性)でもある。

STAR面接は応募者のパーソナルな面を掘り下げるのにとても効果的。一方で質問の意図が明確でなければならないために、面接官のスキルも求められることを忘れてはならない。

③意思決定

意思決定。つまり内定を出すわけだ。
競合と差別化するためにもスピードが大切!といわれているが、スピードに囚われすぎて中身が軽くなるのには要注意だ。
当然ながら、あなたが内定を出す人材は魅力的な方だろう。
ただ、それは他の会社にも同じことがいえる。
都合良く1社だけ面接を受けている方が珍しい。優秀な人ほど複数面接を受けるとも言われているから尚更だ。

双方の面接後、こんな現象が起きるだろう。

応募者「〇」企業「×」
応募者「〇」企業「△」
応募者「〇」企業「〇」
応募者「△」企業「×」
応募者「△」企業「△」
応募者「△」企業「〇」
応募者「×」企業「×」
応募者「×」企業「△」
応募者「×」企業「〇」

今回の例では採用エージェントの介入は想定していないため、応募者からの直接応募という想定だ。
余談だが、採用エージェントの介入はある意味「△」を「〇」に。「×」を「△or〇」にすることができることも魅力の一つだろう。

さて、簡単にいえば以下6つのパターンで企業側の対応がわかれてくる。

応募者「〇」企業「△」
応募者「〇」企業「〇」
応募者「△」企業「△」
応募者「△」企業「〇」
応募者「×」企業「△」
応募者「×」企業「〇」

もう一度面接するか、採用を決めるか。すごく簡単に説明してしまっているが、忘れて欲しくないのは応募者側には「〇、△、×」のいずれの可能性もあるということだ。
つまり、企業が「〇」だからといって簡単に内定を出してしまっても応募者が「△or×」であれば内定辞退になる可能性があるわけだ。

クロージング(口説く)にはタイミング、情報材料、応募者にとっても魅力訴求、キャリアステップなど、採用担当者としての高い技術と知識が必要となる。
だから人事部という部が単体で存在するのだ。
その他業務と並行して人事業務をやるというものでもない。

人材会社では日頃から当たり前のように採用を恋愛で例えていた。
フィーリング、タイミング、ハプニング、運命の出会いを語るには非常に身近で納得感があるからだ。

恋愛であれば、自分の魅力という要素がある。これは採用では会社の魅力。
恋愛で周囲の協力、後押しなどは、採用では現場の協力体制。
恋愛で求めるタイプは、採用では求めるターゲットであるわけだ。

恋愛では一目惚れがあるが、基本的には継続的な接点から感情が発展していくだろう。
採用も同じだ。選考過程で求職者とのコミュニケーションに尽きるのだ。